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良い宇宙人と悪い宇宙人の話地球編

NO11「魔女狩りで霊感人間を火あぶりにする 」

  • こんな"はる"のような霊感人間がいっぱい増えたらどうしたらいいんだ。

    おれたち(悪い宇宙人)は困るぞ。

    現代は霊感を否定する科学が発達したのでありがたいぞ。

    だから霊感人間は少なくなったな。

    科学に霊感を否定させておいたおかげで、あんまり霊感で見た物を信じなくなったぞ。

    だが中世以前の時代はまったく苦労したぞ。

    はるの父親は、娘の言うことだからあんまり疑ってはいないな。

    だがやつも現代科学の世界に住んでいるからな。

    全面的には信じないだろう。

    今の時代は科学万能で、そうゆう面ではやりやすいぞ。

    はるは

    「八ヶ岳に引っ越してから霊感ができた」

    と言っていたな。

    やはり自然が霊感を強くするのは致し方ないな。

    中世ヨーロッパでもそうだったな。

    自然が一杯だったぞ。

    だから霊感人間はめちゃくちゃ多かったぞ。

    われわれ悪い宇宙人はなんとかしてこれらの霊感人間を撲滅しようと考えぞ。

    ここで宗教のおでましだ。

    宗教の中でもキリスト教は最高に利用できたぞ。

    霊感人間は魔女の心を持っている!

    「やつらは神が一番嫌いな魔女の心を持っているから霊感ができるんだ」

    霊感は神の敵だ!

    「霊感のあるやつとつきあうと天国には行けないぞ!」と宣伝したんだ。

    教会は見事にこの宣伝をやってくれたぞ。

    霊感人間を "魔女狩り"で探しだしてくれたぞ。

    みんな火あぶりにしてくれたぞ。

    火あぶりにされたやつらは20万人以上はいただろう。

    それからも

    「霊感は魔女の特性だ」

    と宗教を通じて繰り返し宣伝したぞ。

    人間のやつ馬鹿だから、魔女説を信じ込んで、片っ端から霊感人間を見つけて密告してくれたぞ。

    霊感のあるやつらは震え上がったな!

    火あぶりにされてはたまらないので、自分の霊感で知ったことを口にしなくなったな。

    しめしめ、これでたとえ霊感人間がおれたち宇宙人のことを知っても口外できなくなったぞ!

    これも宗教を考えついたお陰だぞ。

    宗教ってなんて便利なんだ!

    宗教はまだまだ利用価値がありそうだ。

    だいたい最近人間は自由に物を考えすぎる。

    ダビンチとか言うやつなんかは、発想が豊かすぎるぞ。

    あんなやつが増えたら科学があっというまに進歩するぞ。

    進歩したら、たとえ幼稚なロケットでも作り出すかもしれんぞ。

    ロケットでおれたちのいる月にまでやってくるかもしれんぞ。

    やつらが月にやってきたらやっかいだ!


    われわれが月を本拠地にして、地球へやってきていることがバレるぞ。

    おれたちが人間の間で暇つぶしの遊びをしていることを知られてしまうぞ。

    一度月にやってくると事実を知ってしまうぞ!

    月にやってきた連中に口外させないようにまた何か考えねばならぬぞ。

    そうなったら強力な裏組織でも作って人間どもを管理せねばならぬぞ。

    月のわれわれに関する秘密を漏らそうとしたら、事故に見せかけて殺してしまうとか−−−。

    だが今はそんな組織を作っている暇がないぞ。

    科学さえ進歩しなければ、月まで行くロケットなんかは作れないぞ!

    科学の進歩を押さえよう。

    「地球は丸い」

    なんて言い出しているやつもいるぞ。

    どうやってそんなやつらを押さえつけたらいいんだ?

    そうだ、ここでも宗教が使えそうだ。

    自由な発想をするやつはしっかり押さえつけよう。

    人間はおれたちのペットなんだ。

    だから朝から晩まで何も考えずに神様を尊敬してさえいればいいんだ。

    彼らに自由に物事を考えさせてはいかん。

    宗教が役に立ちそうだが、どうやって宗教を使う?

    そうだ、宗教裁判だ! 

    宗教には異端者を裁く宗教裁判があったぞ!

    これだ、これだ、何でも宗教裁判にかけて押さえつけよう!

    宗教裁判だ!

    宗教裁判だ!

    科学的な発想をするやつは、神に背く罪で火あぶりだ!

    おお宗教裁判も絶大な効果を発揮したではないか!

    裁判所の中で

    「それでも地球は回っている」

    などとぬかしたやつがいたな!

    だが、やつの声は聞き取れぬぐらい小さかったぞ。

    ざま〜みろ!

    俺様の考え出した宗教の力を思い知ったか!

    宗教のお陰で人間は“神様”の一言で何でも言いなりになるぞ!

    宗教ほど便利なものは無いんだからな!

    われわれには暇つぶしが一番必要なんだ。

    不死になってみろ、どんなに退屈か!

    おれたちは人間の間に入って遊ぶんだ。

    これだけがわれわれの退屈を救ってくれる唯一の遊びなんだ。

    他の遊びは3日で飽きるぞ!

    10年も続けると気が狂うぞ。

    人間に混じって遊ぶんだ!

    人間をダマして遊ぶんだ!

    無知な人間の“間”に入って遊ぶんだ!

    おれたち宇宙人が人の“間”にいるのは人には知らせてはいけないんだ。

    誰だ!

    “人間”なんていう漢字を考えついたやつは!

    “人”だけでいいはずなのに、わざわざ目立つように“間”なんかをくっつけたのは!

    この漢字も、近い将来消してしまわねばならんぞ。

    おお、また一つ気がかりなことができたぞ。

    「人間に混じっているおれたちが年を取らない。死なない」

    ということを感づいたやつが少しいるぞ。

    人間の中にも、たまに記憶力の良いやつがいるのが問題だ。

    そいつらが、過去のことを覚えていて、みんなに話しまくるのが気にいらんぞ。

    「50年たってもまったく老けない人間がいるが、それはおかしい」

    なんて隣近所にしゃべって歩いているぞ。

    日本では

    「武内(たけのうち)スクネは300年生きた」

    とか話しているぞ。

    西洋では

    「サンジェルマン伯爵が3000年生きた」

    とか言っているぞ。

    おれたちの“不死の秘密”をしゃべるやつがそこらじゅうにいるぞ。

    部下の数人は“死ぬ演技”に失敗して疑惑をもたれたし・・・

    こいつらぺらぺらしゃべる連中は 語り部などと呼ばれて職業化してしまっているぞ。

    こいつらも消すことも考えなきゃ!

    語り部を消すにはどうしたらいいんだ!

    悪い宇宙人は必死に考えました。

    またまた良い考えが浮かびました。

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