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現代食養生 Vol.20
こんにちは。玄米一筋20年、株式会社マイセン代表の牧野です。この度は 数あるサイトの中からマイセンをお選びいただき、誠にありがとうございます。
現代食養生も20回を迎え、いよいよ佳境に入って参りました。情報がいろ いろ氾濫する現代において、中には間違った知識や情報に混乱される方もいら っしゃるようです。特に玄米の持つ「フィチン酸」や「アブシンジン酸」につ いての学術的根拠のない中傷に困惑されたご質問をいただくことがあります。
そこで、玄米食の歴史や安全性について私なりに考察したことをお伝えした いと思います。
株式会社マイセン 代表取締役 牧野 仙以知 ---------------------------------------------------------------------- (1)日本人の白米の歴史はせいぜい200年
縄文時代に日本に稲作が伝わり、山の木の実からお米を主食にするようにな って約2000年以上の時が経っていますが、白米を食べるようになったのは 江戸中期の頃からといわれ、せいぜい200年しか経っていません。
それまではたいした精米技術もなく、ほとんど玄米に近い状態でお米を食べ ていたと考えられます。戦国時代の武将たちの不眠不休の働きぶりやバイタリ ティは玄米から来たものですし、事実、豊臣秀吉の一番の家臣であった加藤清 正の家訓には「米は玄米(くろごめ)にすべし」とあるほどです。(たぶんこ の頃には、貴族や大名たちの間で白米を食べるものが出てきたのでしょう) 庶民が白米を食べるようになった江戸中期ごろには「江戸わずらい」という病 気がはやったのはご承知の通り、玄米を食べなくなったことによるビタミン不 足による脚気(かっけ)です。
『日本近代医学の父』と称されるドイツ人エルウィン フォンベルツ博士は、 明治9年に来日し、その時、彼は驚くべき経験をしました。
彼は日光へ旅をした際、馬で行ったのですが、途中で6回も馬を取り替えな ければなりませんでした。そこで、2回目の旅では人力車で向かったところ、 その車夫は一人で日光まで行ってしまったということです。馬よりすごい車夫 に驚き、彼はある実験を始めました。
車夫を雇い、食事を調べながら毎日体重80㎏の人を乗せて40㎞走らせる、 というものです。博士は主に肉等を与えていたのですが、車夫の疲労が激しく 3日で走れなくなってしまい、「玄米食に戻して欲しい」とお願いされたそう です。
このように、長い日本の食の歴史の中でそのほとんどが「玄米食」だった という事実は間違いありません。
(2)アメリカのマクガバンレポートより
今から40年ほど前その当時アメリカでは心臓病の死亡率が一位で、癌は二 位でしたが、心臓病だけでもアメリカの経済はパンクしかねないと言われる程 医療費が増大していました。(1977年には1180億ドル―約25兆円)が、そんな財 政的危機を何とか打開しようということで、医療改革が進められたのです。
そして、その一環として上院に「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」を 設置し、全世界からよりすぐりの医学・栄養学者を結集して「食事(栄養)と健 康・慢性疾患の関係」についての世界的規模の調査・研究が7年間の歳月と数 千万ドルの国費を投入して行なわれ、5000ページに及ぶ膨大な報告がなされて いるのですが、それを「上院レポート」又は委員長の名前をとって「マクガバ ンレポート」とも呼んでいます。
そして、その『上院レポート』は「心臓病をはじめとする諸々の慢性病は、 肉食中心の誤った食生活がもたらした《食原病》であり、薬では治らない」と 決め付け、更に「われわれはこの事実を率直に認めて、すぐさま食事の内容を 改善する必要がある」として、7項目の食事改善の指針を打ち出していますが、 その内容を要約しますと、高カロリー、高脂肪の食品つまり肉、乳製品、卵と いった動物性食品を減らし、できるだけ精製しない穀物や野菜、果物を多く摂 るようにと勧告しています。
また、この『上院レポート』を補足する形で発表されたのが『食物・栄養と ガン』に関する特別委員会の中間報告ですが、そのレポートで特に注目される のは、「タンパク質(肉)の摂取量が増えると乳ガン、子宮内膜ガン、前立腺ガ ン、結腸・直腸ガン、膵ガン、胃ガンなどの発生率が高まる恐れがある」とし て「これまでの西洋ふうな食事では脂肪とタンパク摂取量との相関関係は非常 に高い」と述べています。
そして最も理想的な食事は元禄時代以前(庶民が白米を食べる以前)の日本
人の食事であることが明記されているのです。元禄時代以前の食事と言います
と結局は精白しない殻類(玄米)を主食とした季節の野菜や海草や小さな魚介
類といった内容です。
当時も、玄米のフィチン酸の良し悪しについいては、学術的にも議論された 上でのレポートであるはずです。
(3)私の体験
私が玄米食を始めたキッカケは友人の社長がガンになって私の玄米を食べる ようになったからです。それまで、私は玄米を食べるなんて信じられませんで した。友人は、牧野のところの安全な玄米なら安心して食べられるといって玄 米食の素晴らしさを教えてくれたのです。以来、私も玄米の勉強をしてずっと 家族全員が玄米食です。
当時二人の子供は小学生でした。特に次男は病弱で、毎月のように病院通い だったのが、いつの間にか元気なり、病気知らずです。今では、私の背丈をは るかに追い越し、180cmもあり、元気に東京の大学に通っております。長男 も大学4年間を応援指導部という厳しいクラブ活動の中、全く病気知らず。健 康そのもので、社会人となっています。二人とも、牛乳は飲んでいません。玄 米食のお陰で、すっかりあっさり日本食等で、マクドナルドもケンタッキーも 全く食べません。
例の友人は一年ほどでガンも完治し、今も元気で会社経営の指揮を取っています。
毛髪による体のミネラルバランスや体調を測定する予防医学検査があるので すが、その毛髪検査でも理想的ミネラルバランスと、検査をされたお医者様も びっくりされていました。
玄米のフィチン酸(IP6)が、体内のミネラルを出してしまうというのが 本当ならば、私をはじめ家族全員ミネラル不足で、子供は背も伸びないという ことになるはずですが、全くそのようなことはありません。
ちなみに、私は肉は全く食べません。お魚をたまに食べる程度で、ほとんど 玄米と野菜だけ。子供も肉や魚類は全体の15%以内を目安にしています。
以上が、私の主観的な考察です。
(4)学術的考察
次に、学術的な観点から申し上げます。以下に述べる論文は、1998年に 京都で開かれた「コメと疾病予防に関する国際シンポジウム」の発表論文をま とめたものです。
フィチン酸(IP6)
フィチン酸(IP6)は、細胞の成育に欠かせない物質として知られていま す。最新の研究により、生体内でフィチン酸(IP6)が様々な生理活性作用 をすることが明らかになりました。がんの予防、脂肪肝や動脈硬化の抑制、心 臓血管病の予防、尿路結石や腎結石の予防、抗酸化作用など多岐に亘っていま す。このフィチン酸は、アルカリと結合して中性の塩になる性質をもっている ため、フィチン酸は鉄やカルシウムがあると、それと結合してフィチン酸塩を つくってしまい、フェチン酸により体内のミネラルが排出されることから継続 的な玄米食は危険という意見もあります。
しかし、メリーランド大学のシャムスディン教授らの動物実験で、フィチン 酸(IP6)が血液中のミネラル(Ca 2+ 、Fe 2+、Mg 2+、Zn 2+)の濃度に 影響を与えなかったことを立証しました。
フィチン酸(IP6)の働きが発見されたきっかけは、米国メリーランド大 学医学部の医学博士・シャムスディン教授がフィンランドとデンマークのガン 発生率の差に着目したことにあります。
従来の大腸ガン予防研究では、食物繊維にばかり重点が置かれ「食物繊維を 多くとればとるほどガンの発生率が低下する」と考えられていました。
ところが、デンマークとフィンランドの人々の食物繊維摂取量を調査すると、 双方とも同じくらいの食物繊維をとっているにもかかわらず、デンマークのほ うが大腸ガンの発生率が二倍も高いということが判明したのです。
そこで、さらにそれぞれの食生活の違いをこまかく調べたところ、フィンラ ンド人のほうがぬかや胚芽のついた穀物をたくさんとっていることがわかりま した。つまり、IP6の多い穀物を中心に食事をしている人々のほうが、大腸 ガンの発生率が少なかったのです。
その後、シャムスディン教授はこのフィチン酸(IP6)が大腸ガンだけで なく、肺ガン、乳ガンなどの多くのガンを抑制する効果があることを、ラット を使った実験によって確認しています。
またフィチン酸(IP6)は、病気や老化のもととなる活性酸素の害を2/ 5以下に抑えることもわかりました。これがフィチン酸(IP6)はガンだけ でなく、生活習慣病の予防や改善にも有効に働くゆえんなのです。
イノシトールとフィチン酸(IP6)には、コレステロールや脂肪など、体 内の汚れを除去する効果もあります。
コレステロールがふえすぎる理由のひとつとして、体内の銅と亜鉛のバラン スの崩れがあります。IP6は、この亜鉛と銅の比を正常化させ、コレステ ロールを正常な状態に整える働きをします。実際に高コレステロール食で飼育 された実験動物にフィチン酸(IP6)を与える実験でも、フィチン酸(IP 6)を与えない場合にくらべて、コレステロール値が19%、中性脂肪値が6 5%低下するという結果が出ています。
またフィチン酸(IP6)には、血管の栓の原因となる、血管壁の「石灰化 プラーク」をとかし、血液をサラサラにする作用もあります。
現在、私たちはいくら注意しても毎日70~80種類もの食品添加物を体内 に入れざるを得ないのが実情です。何とか健康を保つためにも、解毒排泄力の 強い玄米を主食にすることが大変に有効であることがお分かりいただけたので はないでしょうか。
玄米に含まれる「フィチン酸」(IP6)は、細胞の成育に欠かせない物質 として知られていることは前に述べたとおりです。
それに加えて、フィチン酸(IP6)は汚染物質の水銀やカドミウムなどと 化学結合して水に不溶性の塩となって排泄します。農薬のPCBその他の毒物 も排除します。
つまり食品添加物や農薬、公害汚染物質などの毒を絡みこんで体外に排泄す る作用があるのです。いわば体内の有害物質掃除人といえるでしょう。
このフィチン酸(IP6)と玄米に豊富に含まれる食物繊維の相乗効果で強 力な解毒作用が生まれてくるのです。
また、玄米に含まれる食物繊維の豊富さは昔から有名ですが、その中でも不 溶性食物繊維というものが大きな役割を持っています。水分を吸収して膨らん だ玄米の不溶性食物繊維は、消化に時間がかかるために脳内の満腹中枢を刺激 し少量で満足を得られるという面があります。そのためにご飯の量を減らさな くてもダイエット効果が生じます。
また更に不溶性食物繊維は腸を刺激し排便を促すことから便秘解消の効果も あり、まさに美容の味方。そのためビタミン・ミネラルをはじめとする各種栄 養素の吸収効率が高まり健康への好循環が生じます。
食物繊維の素晴らしさはこれだけではなく、体内のゴミ掃除をしてくれる点。 体内の食品添加物やガン化の原因になるさまざまな有害物質を吸着し絡め取っ て体外に排出します。
食物繊維とフィチン酸の相乗効果が玄米の持つ解毒・排泄作用と呼ばれるも のです。この作用が非常に高いために玄米は多くのガンの予防に効果的です。
玄米を食べていた人が砒素ミルク中毒や水俣病、戦前には赤痢やコレラなど の発症から免れたり症状が軽くて済んだという報告はかなり多数残っています。 これも玄米の持つ解毒・排泄作用のなせる業です。
最近話題のダイオキシンは、発がん性や肝臓障害などを引き起こし、体内に 入ると脂肪組織に蓄積し、排泄されにくいものです。しかし、食物繊維と葉緑 素を多く含む緑黄色野菜がダイオキシンを体外に排出する効果の高いことを、 福岡県保健環境研究所の森田邦正氏らの研究グループがラットの実験で明らか にしました。特に、玄米による排泄量が最も高かったことが明らかになりまし た。
アブシジン酸
なぜ玄米をはじめとして植物の種がアブシジン酸を持っているかというと、 一定の温度を積み上げないと発芽しないようにアブシンジン酸がコントロール しているのです。逆に一定の温度が続くとアブシジン酸は消滅するという凄い 自然の仕組みがあります。
いつでも、水分があれば芽が出てしまったら、冬でもいつでも芽が出て困る ことになります。神様のお知恵としか言いようがないくらい正確無比です。
一定の温度がかかるとアブシジン酸は消えて無くなり、芽が出ることが可能 になるのです。ですから春になると一斉に芽が出てくるのです。
アブシジン酸は熱に弱い物質です。そいうわけで炊飯すると熱がかかります と消滅します。ですから玄米御飯に炊飯した場合は問題ありません。
長い間放置されていた植物の種が、条件が整ったとたんに発芽することがあ りますね。これは、フィチン酸(IP6)やアブシジン酸が種子を有害な物質 や刺激から守り、発芽する力を維持できるよう、生命を守るという働きを持っ ているからなのです。
この、生命を守るという点が大切ではないかと私は考えています。ただの、 化学物質としてフィチン酸(IP6)やアブシジン酸を考えると、確かに、体 内の大切なミネラルを沢山排出してしまうのではないかという疑問が出ます。
しかし、、体内ではまるで神の力が宿っているような、人間の知識では考え られないような精妙な化学反応が起こっています。全てが、生命を守るために 最善が行われ、フィチン酸(IP6)も体内では生命を守るように働く大切な パートーナーとなる機能性物質なのです。だからこそ、メリーランド大学のシ ャムスディン教授らの動物実験の通り、フィチン酸(IP6)が血液中のミネ ラル(Ca 2+ 、Fe 2+、Mg 2+、Zn 2+)の濃度に影響を与えなかったことを立 証できたのでしょうし、私の体内ミネラルも理想的バランスという結果が出た のでしょう。
(現代食養生 Vol.20 完)
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