核化学を専門とするローマ大学のジュゼッペ・リウッツォ教授も同じ指摘をした。 「福島第一原発は約40年前に津波のことを考慮していない、不適切な設計のもとに建てられていました。 その結果、海水によって発電機が使い物にならなくなって、原発をコントロールすることができなくなったのです」 原子力の専門家40人に「今回、日本政府や東電の事故への対応は適切だったか」とたずねたところ、「適切だった」2人、「適切ではなかった」22人、「その他」16人という回答結果を得た。 当然のことだが、きわめて厳しい評価だ。 原子力工学を専門とする九州大学特任教授の工藤和彦氏は、その理由として「情報発信のまずさ」をまず挙げた。 「官邸、保安院、東電それぞれの記者会見が別々に行われているのは、奇異に感じた。 情報も錯綜していることがありました。 このような大事故の場合、関係者が一堂に会して情報を発信することが必要ではないでしょうか。 また外国からの技術支援はある程度積極的に受けるべきだと思います。 フランスやアメリカでは重大事故の研究が進んでおり、我が国が持っていない技術も手にしているのですから」 技術的な面での未熟さも指摘されている。 「1号機については、あまりに時間がなくてどうしようもなかったかもしれません。 あっという間に水素爆発してしまいましたから。 でも2号機、3号機については適切で時宜を得た抑止策をとっていれば、損傷を避けられたと思います」 (フィンランドの放射線・原子力安全センターのラークソネン所長) 放射性物質に汚染された水の海への放出は、東アジアの国々から顰蹙を買った。 ソウル大学の徐教授はこう批判する。 「絶対にいけないことだと思う。 汚染水を周辺国に事前通告なしに海に棄てるなんて、夜中に寝静まっている隣家の庭にゴミを棄てるようなものです。 失礼で非常識な行動と言えるでしょう」 福島原発事故の影響は環境面だけでなく、世界各国のエネルギー政策にまで広がっている。 「我々にとって原子力はこれからも必要か」。 40人の専門家たちに尋ねた。 その答えは、 ・必要18人 ・条件付きで必要8人 ・不要8人 ・その他6人 と分かれた。 フランス原子力庁元原子炉部長のベルトラン・バレ氏は「必要だ」と言う。 「期間は国によって異なるが、しばらく原発建設の休止を覚悟しなければならない。 しかし原子力以外に地球の気候のバランスを危うくすることなく、増え続ける人口と急速な経済発展を続ける地域を支えられるエネルギーはありません」 前IAEA事務次長のハイノネン氏も「他に優れた代替エネルギーがあると私は思いません。 それぞれのエネルギーには危険と弱点があります。 我々がするべきことは、事故から学び原子力をより安全にすることです」と話す。 地震国に原発はムリだった 在日イタリア大使館元科学技術担当官のカルロ・エッラーニ氏は「原子力は必要ない」と考えている。 「いままでのライフスタイルを変えれば原子力に頼る必要はなくなると思う。 浪費を止め、必要のないものの生産を止めればいいでしょう。 ウランはやがて枯渇するし、核廃棄物は永遠の問題として残ってしまう」 日本の専門家たちはどう考えているのか。 日本原子力学会の辻倉米蔵会長は、「人類の発展のためにエネルギー確保は必要。 化石燃料のCO2排出問題などの課題解決の目処が立たない以上、安全運転さえすれば、地球環境に対して影響の少ない原子力に頼らざるを得ないと認識している」と主張する。 日本はどうすべきか。 フランスの核物理学者ベルナール・ラポンシュ氏の答えはシンプルだ。 「原子力はなるべく早く止めるべきです。 とくに日本のような地震があるゾーンに原発は造るべきではありません」 立命館大学の安斎名誉教授は事故後に福島の浪江町を歩いてみたという。 「現地に行ってみると花は美しく咲き、畑にも豊かな実りがあるのですが、人っ子一人いない。 ここには、しばらく戻れそうもないという『透明の恐怖』を感じました。 こういうことは現場に行かないとわかりません。 そういう感覚を世界がどれだけ共有できるかだと思うのです。 あの事故は日本特有のものだといわれているうちは何も変わらない。 いずれ原発はなくさなくてはいけないでしょう。 私たちの間ではフェードアウトと言っています。 徐々に減らしていくのです」 最後に九州大学の工藤教授の言葉を紹介しよう。
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平成23年4月22日(金)午前 . <計画的避難区域及び緊急時避難準備区域の設定等について> 私(官房長官)から何点か発表、ご報告をいたします。 まず計画的避難区域及び緊急時避難準備区域の設定等について、原子力災害対策本部長である総理から、福島県知事及び関係市町村長に対し、指示が出されましたので公表をいたします。 ご承知のとおり、東京電力福島第一原子力発電所から20km以遠、20km遠い周辺地域においては、気象や地理的条件などにより、発電所からの放射線物質が累積し積算線量が高くなっている地域が局所的に出ております。 国際原子力機関(IAEA)などの国際機関の緊急時被ばく状況における放射線防護の基準値、年間20から100ミリシーベルトとされていますが、こうしたことを考慮をいたしますと、これらの地域に居住し続けた場合、積算線量が更に高水準となり、事故発生から1年の間に積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれがあるため、このような地域を本日「計画的避難区域」といたしました。 地域住民の方々には、この間も大変なご苦労をお掛けをしておるところでございますが、更に大きなご苦労をお掛けをすることになり大変申し訳なく存じますが、健康への影響を考え、別の場所に計画的に避難をしていただくことをお願い申し上げます。 これら計画的避難区域に該当する地域は、東京電力福島原子力発電所から20km以上離れた地域のうち、葛尾村の全域、浪江町の全域、飯舘村の全域、そして川俣町の一部地域、南相馬市の一部地域が該当をいたします。 この計画的避難については、避難に係る具体的な実施手順を当該市町村、県及び国が密接に連携しながら調整し、約1か月後を目途として実施をしてまいります。 また、発電所から半径20kmから30kmの区域について、これまでの屋内退避の指示は解除をいたします。 一方で、未だに安定しない発電所の状況に鑑み、緊急に対応することが求められる可能性があることから、計画的避難区域に設定される区域を除く、概ね20kmから30kmの区域について、新たに、緊急時に屋内退避や自力での避難ができるよう、準備をするようお願いをする「緊急時避難準備区域」といたしました。 この区域においては、引き続き自主的避難をすることが求められ、特に、子供、妊婦の方々、介護を要する皆さん、入院患者の皆さんなどは、この区域に入らないことが引き続き求められます。 他方、勤務等のやむを得ない用務などを果たすために、緊急時避難準備区域に入ることは妨げられません。 特に、物資の輸送等に関わる皆さんにおきましては、通常時において当該地域に入って物資等の運び込み等を頂くことについての問題はありませんので、是非しっかりと生活関連物資等の当該地域への運送、運搬についてご対応をよろしくお願いを申し上げます。 この緊急時避難準備区域に該当する地域は、東京電力福島第一原子力発電所から20kmより遠く30kmより近い区域のうち、広野町、楢葉町、川内村、そして、田村市の一部、南相馬市の一部が該当を致します。 この区域における対応は、当該市町村、県及び国の密接な連携の下に行なってまいります。 区域の設定の在り方については、発電所からの放射性物質の放出が基本的に管理される状況になると判断される時点、先般の収束に向けた道筋に依れば、6か月から9か月先になります。 その段階で環境モニタリングのデータを集積・分析する等により見直しを行なうことと致しております。 今回、新しい区域を設定したことで、住民の皆様方には、今までとは違った形でありますが、引き続き様々なご苦労をお掛けをすることになりますが、ご理解をいただきますよう、お願いをいたします。 また、発電所から30kmより遠い地域で新たに計画的避難区域に指定され、その区域にほとんどの住民が現時点でお住まいになっている飯舘村及び川俣町の2カ所について、この度、「現地政府対策室」を立ち上げ、総務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省の職員からなる管理職級を含む、両町村で8名を常駐させることといたしました。 これらの職員は今朝、現地に向けて出発をしております。 この現地政府対策室において、地元町村と連携を取りながら、きめ細かな避難への対応、相談、生活支援等を行なってまいります。 本件についてはこの後、原子力安全・保安院において詳細なレクチャーを予定しております。 詳細についてのお訊ねはそちらの方にお願いをいたします。 |
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新ベンチャー革命2011年5月9日 No.362 タイトル: <3号機原子炉爆発:起きないよう神に祈るしか手がない!>1.非常に危うい状態で冷却作業が続けられている福島原発事故機 東電福島第一原発のうちMOX燃料の入っている3号機のRPV(原子炉圧力容器)の温度が急上昇中です。 ネット情報によれば、2011年5月8日の午前1時過ぎ、3号機から黒煙が上がっているのをTBSのJNNライブカメラがとらえたようです。 東電HPの3号機RPV温度は、5月頭に100度Cだったものが、5月9日早朝には200~300度Cまで急上昇しています。 5月9日現在、3号機の原子炉内水位はマイナス2100oで、燃料棒露出度は35.8%です(注1)。 1号機から3号機は程度の差こそあれ、すべて燃料棒が3割前後露出して完全水没していないのです。 燃料棒の崩壊熱の発熱量が大きすぎて、冷却水注入量を増やそうとすると容器内にてたちまち蒸気が発生し、圧力容器内の内圧が高くなって、冷却水の注水が十分にできないのです。 そこで、容器内の蒸気圧を安全値に維持しながら冷却水を注入にすると今度は、容器内の水位を高めることができず、燃料棒の3割が露出してしまうわけです。 さらに、容器および配管系にクラックが入っており、冷却水はリークしている可能性が高いわけです。 そのリーク水は発電機建屋内などに流れて高濃度汚染水として溜まっています。 何という情けない状態でしょうか。 このように非常に危うい状態で燃料棒の冷却が続けられています。 人間に例えれば、下血が止まらない状態で無限に輸血を続けて生かされた危篤状態です。 2.壊れた原子炉は猛毒のウィルスを発散させる危篤状態の人間と同じ 破局事故を起こした原子炉ほど始末に負えない代物は他に例がないでしょう。 まさに危篤状態の人間と同じで、輸血のみで生きながらえる瀕死の人間です。 一瞬でも、輸血(=燃料棒冷却)を止められないわけです。 下血を止める手術をしようにも、猛毒のウィルスに侵されており、医者がその患者に近づけないので、手術もできないのです。 このような状態を何年も続けなければならないとは、気が遠くなりそうです。 筆者もプラント・エンジニアのはしくれだったのですが、原子炉ほど厄介極まりないプラントは他にないと思います。 |
(つづく)