<最近の素粒子論_反物質などいろいろ>
コメント===1〜3===
欧州原子核研究機構(CERN)が運営する大型ハドロン衝突型加速器(LHC)が、稼働を開始して、いろいろと面白い結果が発見されているようである。
これで、素粒子論の世界も賑やかになりそうである。
惜しむらくは 人類の残り時間は 少ないようで、最期まで見届けることが困難なことであろうか!
1。 <最も重い反物質を発見、米RHIC> http://www.nationalgeographic.co.jp/news/ 2。<陽子は通説より小さいと示す実験結果> http://www.nationalgeographic.co.jp/news/ 3。 <“神の粒子”は5種類あるとの新証拠> http://www.nationalgeographic.co.jp/news/ |
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<最も重い反物質を発見、米RHIC>Rachel Kaufman for National Geographic News February 23, 2011 アメリカ、ニューヨーク州ロングアイランドで実施された小規模のビッグバン実験により、新しいタイプの反物質が作り出された。 実験に参加した科学者によると、文字通り“規格外”の物質だという。 「反ハイパー三重陽子(antihypertriton)」と名付けられた新発見の反物質は、過去最大の質量を誇るが特徴はそれだけではない。 反ストレンジクオークを構成要素とする初の粒子であり、従来の元素周期表には収まりきらないのである。 新しい反物質は昨春、ニューヨーク州のブルックヘブン国立研究所(BNL)にある相対論的重イオン衝突型加速器(RHIC)を稼働して作り出された。 RHICでは電子を除去した原子「重イオン」同士をほぼ光速で衝突させて、構成粒子に分解することができる。 金イオンを10万回以上も衝突させた末に微粒子の「破片」をふるいにかけたところ、約70個の反ハイパー三重陽子が発見された。 この粒子は、質量の最大記録を保持していた反ヘリウムより200ミリ電子ボルトほど重い。 通常の原子の核は、陽子や中性子と呼ばれる素粒子で構成される。 素粒子はさらに小さいクオークやグルーオンなどの粒子で作られている。 一方、反物質の核は、元の素粒子と質量は同じだが電荷と磁気モーメントが逆転した反素粒子から成っている。 ビッグバン実験の初期段階では、同量の正物質と反物質が作り出された。 しかし、重力の影響を受けて拡散しない物質が非常に多く存在したのである。 その小さな空間で反物質と正物質が衝突して対消滅を起こし、質量が純粋なエネルギーへと変化したという。 物理学界では、実際の対消滅後も物質が存続した理由、現在の宇宙に反物質より多くの正物質が存在する理由をいまだ導き出せていない。 その謎を解く1つの手段として、RHICでは今回のようなミニ・ビッグバン実験が続いている。 ワシントンD.C.で開催されたアメリカ科学振興協会の会合で実験結果を発表したRHICの研究者チャンブー・シュー(Zhangbu Xu)氏は、「RHICで粒子同士が超高速衝突を起こすと、クオークやグルーオンの“スープ”が作り出される」と述べている。 そしてスープが一瞬で冷めると、素粒子が結合してハイパー三重陽子や反ハイパー三重陽子など大きめの粒子が形成されるという。 科学界では、ビッグバン直後もまったく同じ現象が起きたと考えられている。 物理学者たちは、反ハイパー三重陽子の発見に興奮しきりのようだ。 元素の“立体周期表”で考えた場合に、従来何も存在しなかった場所に位置するからである。 理科の教科書に描かれている2次元周期表の配列は、原子核が保持する陽子の個数(質量の大小も示す)を基準としている。 しかし素粒子物理学者はさらに中性子の個数や、陽子や中性子にはないストレンジクオークの個数も基準に加え、周期表を立体的に表現する手法を編み出した。 通常の水素原子、ヘリウム原子、リチウム原子の中にはストレンジクオークを保持する種類もあり、それらは2次元周期表の平面の“上”に位置する。 しかし新発見の反ハイパー三重陽子は反ストレンジクオークを保持する初の反物質であり、前例のない平面の“下”に位置することとなった。 「反ハイパー三重陽子の発見自体は素晴らしいが、物理学的な意義はいまのところはっきりしない」と、イギリスにあるオックスフォード大学の物理学者で反物質に詳しいフランク・クローズ氏はコメントする。 「切手収集のようなもので、手に入れば何でも良いわけではない。 今回の発見では、“正物質と反物質は同数出現する”という通説が裏付けられた。 ただし、現実の宇宙で反物質が非常に少ない理由を導くまでには至っていない。 手掛かりの1つにはなるかもしれないがね」。 Photograph courtesy Brookhaven National Laboratory |
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<陽子は通説より小さいと示す実験結果>Kate Ravilious for National Geographic News July 8, 2010 原子の構成要素である陽子は通説よりも小さいとする実験結果が発表された。 今後、物理法則の根本がひっくり返ってしまうかもしれない。 すべての原子は原子核とその周囲にある電子で構成される。 原子核は中性子と陽子から成り、両者はクオークと呼ぶ粒子でできている。 長年、陽子の半径は0.8768フェムトメートルとされてきた。 1フェムトメートルは1000兆分の1メートルを表す。 陽子の半径は、60年の歴史を持つ量子電磁力学(QED)理論の方程式に不可欠な数値だ。 重力以外のあらゆる力が素粒子に及ぼす影響を説明する素粒子物理学の標準模型も、QEDを基礎にして成り立っている。 しかし、まだ1%の誤差が残っており、QED理論を完璧なものとするには精度が足りない。 物理学者たちは誤差を解消する方法を模索してきた。 ドイツ、ガルヒンクにあるマックス・プランク量子光学研究所のランドルフ・ポール氏率いる研究チームは、水素原子を変化させる特別な粒子加速器を使用して10年間にわたり実験を行った。 水素原子は、陽子と電子1つずつで構成されている。 実験では、水素原子の電子を、その200倍の質量を持つミューオンと呼ぶ粒子に置き換えた。 研究チームのメンバーで、スイスのパウル・シェラー研究所に所属するアルド・アントニーニ(Aldo Antognini)氏は、「ミューオンは非常に重いため、陽子のすぐそばを周回する。 つまり、陽子のサイズに影響を受けやすくなる」と説明する。 ミューオンは不安定な粒子で、わずか2.2マイクロ秒でほかの粒子に壊変する。 壊変前に原子へ向けてレーザーを照射すれば、ミューオンが励起し、高いエネルギー準位、つまり高い軌道に移ることは既に知られていた。 その後、余分なエネルギーをX線として放出し、低いエネルギー準位へと戻っていくはずだ。 エネルギー準位にどれくらい差が生じるかは、陽子の大きさによって決まる。 また、陽子の大きさは放出されるX線の周波数も左右する。 しかし、従来の陽子半径から予想される周波数のX線は放出されなかった。 そこで2009年夏、研究チームは有効と思われる陽子半径の検出範囲を逆に広げてみた。 すると驚くことに、半径0.8418フェムトメートルに対応する周波数が検出された。 従来より4%も小さく、誤差の範囲を超える数値だ。 「われわれもびっくりしている。 今はまだ、どうしたら説明できるかわからない」とアントニーニ氏は話す。 今回の発見が普通の人々の日常に影響を与えることはまずない。 しかし、正しいと証明されれば、素粒子物理学の根幹を揺るがすことになる。 もし陽子が小さければ、リュードベリ定数が間違っていた可能性が出てくる。 リュードベリ定数は、さまざまな元素から光がどのように発せられるかを表し、分光法に欠かすことができない。 分光法は、ガスとちりでできた巨大な星雲や銀河に存在する元素の解明などに用いられている。 リュードベリ定数が間違っていなければ、今度はQEDの方程式が成り立たなくなる。 英国国立物理学研究所の科学者ジェフ・フラワーズ氏は実験結果を受け、「まさに激震だ。 QEDを丸ごと見直すことになり、新たな理論の扉が開かれるかもしれない」と語る。 今後は、世界中の物理学者が実験方法や複雑な計算を精査し、間違いがないかどうかを確認する。 もし間違いが見つからなければ、次は標準模型を作り直すことになるかもしれない。 この研究結果は、「Nature」誌の7月8日号に掲載されている。 Image courtesy Dorling Kindersley, Getty Images |
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<“神の粒子”は5種類あるとの新証拠>Ker Than for National Geographic News June 17, 2010 物理学の標準模型では説明できない“刺激的”な研究結果が発表された。 “神の粒子”が5種類存在する可能性が加速器実験で示されたという。 ヒッグス粒子と呼ばれる理論上の粒子は、宇宙のすべてに質量を与えると考えられているため、“神の粒子”という名も持っている。 欧州原子核研究機構(CERN)が運営する大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での実験も、ヒッグス粒子の発見を目指している。 LHCは2010年3月、半分の出力で粒子衝突実験を開始した。 物理学の標準模型では、すべての素粒子はヒッグス粒子との相互作用によって質量を獲得するとされている。 このヒッグス粒子は1種類ではなく、質量は似ているが電荷の異なる複数の種類があるとする説もある。 今回、アメリカのイリノイ州バタビアにあるフェルミ国立加速器研究所の研究者たちは、複数のヒッグス粒子が存在する新たな証拠をつかんだと主張している。 フェルミ研究所の陽子・反陽子衝突型加速器テバトロンによる「Dゼロ」と呼ぶ実験で最近、陽子と反陽子を衝突させた場合、反物質より物質の粒子ペアが生じる確率の方が高いと判明した。 確率の差は1%未満で、ごくわずかだ。 それでも、今回の研究に参加した同研究所の理論物理学者アダム・マーティン氏によると、ヒッグス粒子の種類を1つとする標準模型では説明できないという。 「本当にわずかな違いだが、標準模型のルールにとっては非常に大きな差だ。 1種類しか認めない標準模型は、Dゼロ実験の結果を説明するには不足だ」とマーティン氏は話す。 一方、ヒッグス粒子が5種類あると仮定すれば、実験結果の説明が成り立つ。 この考え方は標準模型の拡張版で、2ヒッグス二重項模型と呼ぶ。 「標準模型を拡張する際、新たな粒子や相互作用を導入した。 その相互作用は、物質や反物質に異なる形で作用する可能性があり、より有意義な実験結果が得られるかもしれない」とマーティン氏は話す。 もし複数のヒッグス粒子が存在すれば、それぞれが物質に異なる形で作用している可能性がある。 その場合、標準模型の枠を超えた未知の理論が見つかるかもしれないと研究チームは期待している。 「標準模型を拡張する方法の多くが、第1段階として複数のヒッグス粒子を付け加えている」とマーティン氏は言う。 同じフェルミ研究所に所属する理論物理学者クリス・クイッグ氏は、「今回の研究結果はかなり刺激的だが、まだ予備的なものにすぎない」と強調する。 「疑う理由はないが、これほど意外で理解が難しい結果については、時間をかけてじっくり考えていく必要がある。 とにかく、早くから騒ぎ立てないことだ」。 もしマーティン氏らが主張する通りヒッグス粒子が5種類存在すれば、スイスのLHCでも検出できるはずだ。 「われわれの解釈では、ヒッグス粒子が重すぎるという可能性はない。 LHCが本格稼働を始めれば間違いなく検出できるはずだ」とマーティン氏は語る。 LHCの重イオン衝突実験装置ALICEのプロジェクト責任者で、イギリスにあるバーミンガム大学の物理学者デイビッド・エバンス氏は、電子メールで次のようなコメントを寄せている。 「個人的には、ヒッグス粒子が5種類ある可能性は低いと思うが、もし正しいと証明されればLHCからますます目が離せなくなるだろう」。 今回の実験結果は、物理学の研究論文が登録されているウェブサイト「arXiv.org」で公開されている。 Photograph courtesy Reidar Hahn, Fermilab |
(ももいちたろう)
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