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フミのミクラマ二『一二三解読・太陽の検証・文(ふみ)の御蔵』

フミのミクラマ二

一二三神示

「天」太陽の投稿記事

『終末と太陽の検証』より

学習・教育・記憶・忘却 NO n690002

−−−−コメント 2012/03/02−−−−

{新69_学習・教育・記憶・忘却_マルチタスクの処理_スーパー・タスカー_01}
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0476・頭脳と能力!?頭脳の並行処理・マルチタスク=スーパー・タスカー_01
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 ヒットラ−の予言によれば、既にして超人たちと呼ばれる人類が生まれていることになっているようだ
問題は 超人が普通の人間達を隠れて支配することは分かるが、具体的な個々の能力について分かっていない
或る程度分かることは 頭脳の情報処理の能力単処理・シングルタスクから並行処理・マルチタスクに進化しいてると考えられることである
この方向からの検討結果である
頭脳の情報処理の能力が単処理・シングルタスク処理=98%頭脳の情報処理の能力が並行処理・マルチタス処理=2%早い話が、50人に1人という割合、全人類が75億人とすると1.5億人がマルチタスク処理の新人類ということになる
従って、或る面でヒットラ−の予言の超人たちの底辺であるとも考えられる
他にも隠された能力があると考えられるので、これら1.5億人がマルチタスク処理の新人類から絞り込まれ、ス−パ−マルチタスク処理の新人類=ヒットラ−の予言の超人たちと言うことになる
案外、注意してみていると、本人がヒットラ−の予言の超人との認識していない、新人類をこれから見かけるようになるのかもしれない
少し年齢が過ぎているがルフランさんは これらの走りの範疇にはいるのかもしれないと思う今日この頃である
{・・・・
興味深いことに、彼らの脳は98%の人たちの脳とは異なっていたという
「スーパー・タスカーとほかの人々を分かつ脳の領域は、人間と人間以外の霊長類で最も異なっている領域と同じだ」と同氏は言う
つまり、彼らの脳は「霊長類とヒトとの違い」をさらに進めたものだ
「進化を先導するエッジ部分だ」
具体的には、「前頭皮質の一部が、興味深い方法で関係している」という
そしてスーパー・タスカーにおいては、マルチタスキング時におけるこの領域が示す活動性が、多くの人の脳、つまり、ほ乳類の「人間らしい脳」と比べて低いのだという
・・・・・・}
超人の芽を持っている子供に注意して見ていると、ロックさんは もしかしたらこの子か!?と思うような子供に会うのかもしれない
{・・・・
いたずら書きをしながらの作業のほうが記憶力が高いという研究結果が発表された
・・・・・・}
いたずら書きをするのも並行処理・マルチタス処理の片鱗だから・・・・

===NO n690002:参考文献の目次===

001:同時作業が得意な「2%の超人類」
002:マルチタスク習慣はオフライン時でも思考に悪影響?
003:スーパー・タスカー:同時作業が得意な、レアな人々
004:「いたずら書きは集中力を高める」その理由は
005:注意回復尺度の開発

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===NO n690002:参考文献の目詳細===

===1===============

同時作業が得意な「2%の超人類」

http://wired.jp/2012/03/01/multitasking/
マルチタスクの処理に優れる「スーパー・タスカー」が、人口全体の2%存在しており、彼らの脳は「普通の人たち」とは明確に異なっているという
研究者に話を聞いた
画像はEd Poor:Wikimedia Commons 私はマルチタスクに向いていない
やろうと思っても、あらゆることが絡まり合ったりこぼれ落ちたりしてしまう
このことで妻はいらだっている
彼女はビーチボールの上に立ちながらカレンダーにメモを書き込んだり、ラジオを聴いたり、携帯でメールを送ったり、チェーンソーを操ったりできる
そうした彼女からすると、「単一タスク」しかできない人間は石器時代の人間であり、地下の政府施設で教育し直されるべき存在と見えるようだ
問題は、単一タスク人間たちに希望はあるのかということだ
私のような単一タスク人間は、マルチタスクになるための教育を受けるべきなのだろうか
それとも完全にあきらめるべきなのだろうか
私は、自分が書いた本『Brain Trust』の中で、ユタ大学応用認知ラボの主任、デビッド・ストレイヤーに疑問をぶつけた
同氏は、「注意散漫な運転」という領域でマルチタスク処理について研究を行っている
ストレイヤー氏の研究では、マルチタスクを処理できず、どちらの課題もパフォーマンスが落ちてしまう人の割合は、全体の98%にも上ることが分かっている
しかし、2%の人たちは、実際にマルチタスクが可能だ
同氏はこうした人々を「スーパー・タスカー」と呼ぶ
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[運転タスクと記憶タスクを同時に課す実験を行ったところ、シングルタスクでもデュアルタスクでも成績に違いがなく、さらに記憶テストの成績においてデュアルタスクの場合のほうが良い等の特徴がある人たちが存在していた
詳しくはこちら(日本語版記事)]
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スーパー・タスカーたちをさらに理解するため、ストレイヤー氏は彼らを神経画像処理や遺伝評価といった一連のテストにかけた
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興味深いことに、彼らの脳は98%の人たちの脳とは異なっていたという
「スーパー・タスカーとほかの人々を分かつ脳の領域は、人間と人間以外の霊長類で最も異なっている領域と同じだ」と同氏は言う
つまり、彼らの脳は「霊長類とヒトとの違い」をさらに進めたものだ
「進化を先導するエッジ部分だ」
具体的には、「前頭皮質の一部が、興味深い方法で関係している」という
そしてスーパー・タスカーにおいては、マルチタスキング時におけるこの領域が示す活動性が、多くの人の脳、つまり、ほ乳類の「人間らしい脳」と比べて低いのだという
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さらに、この領域を効率的に関与させられるかどうかの違いは明確で、どちらかにはっきり分かれるという
人間は、スーパー・タスカーかそうでないかのどちらかなのだ
あなたがスーパー・タスカーでないならば、マルチタスク対応になることはあきらめるべきだ、と科学は教える
マルチタスクをしようと思えばすべてがうまく行かなくなる
適切に行動しようと思うならば、生活を単一タスクに基づいて設計すべきなのだ
そうすれば脳が感謝してくれるだろう
人間は自然の中に行くとストレスから回復するが、これは注意回復理論(attention restoration theory)とよばれるものと関係しているようだ
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[作業対象以外からの刺激や情報を遮断する形で、作業対象に注意(自発的注意)を向け続けると、そのうち疲労等が生じるが、非自発的注意を喚起するようなものと接することで、疲労等が回復するという理論(PDF)] −−−−−−−−−−−−−
「作業対象が豊富にある環境でのマルチタスク処理」は前頭葉の神経細胞を疲れさせてしまうが、こうした作業を控えると、疲れ切った神経細胞が解毒され、休まり、回復するのかもしれない
ストレイヤー氏は、さらなる研究が必要だとすぐに補足しながらも、たくさんのエピソード的経験から「[自然環境の中で]3日も過ごせば、根本的に違った考えが経験され始める」と指摘している
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前頭皮質が疲れたら、できるだけ早く自然のなかに行けばいいのだ
あなたはその途中で私に会うかもしれない
もし私が歩きながら携帯でメールを送信していて足元が危なかったら、ぜひ注意していただきたい
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[日常的に情報をマルチタスク的に操り、ネットやビデオ、チャット、電話などを同時に駆使する者のほうが、認識テストの成績が劣るという研究もある(日本語版記事)
不要な情報を無視したり、作業記憶内で情報を整理したりする能力等が落ちている可能性が指摘されている]
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TEXT BY Garth Sundem
TRANSLATION BY ガリレオ -緒方 亮/合原弘子



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===2===============

マルチタスク習慣はオフライン時でも思考に悪影響?

http://wired.jp/wv/2009/08/25/マルチタスク習慣はオフライン時でも思考に悪影/
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電子メール、ウェブ、電話などを同時利用するマルチタスクの生活習慣が進むほど、集中力がなくなり、作業の成績が悪くなる可能性がある
両者の相関関係を実証する研究が発表された
Brandon Keim
Image: Flickr/TotalAldo
マルチタスクという生活習慣によって、思考方法が変わったのではないかと懸念する声がある
コンピューターや携帯電話を利用していないときでも、気が散りやすく、集中できなくなったというのだ
この不安が正しいことが証明されたようだ
複数のテストにおいて、日常的に多くの情報の流れを操り、電子メールやウェブ・テキスト、ビデオ、チャット、電話などを駆使する大学生が、マルチタスクの度合が低い他の学生と比べて作業の進み具合が大幅に劣っていたのだ
これまでの研究では、マルチタスクの即座に現れる影響に焦点をあててきた
テレビを見ながら宿題をする子供ほど宿題の出来が悪いとか、会社で5分おきに電子メールをチェックしない人のほうが仕事の生産性が上がる、などだ
しかし、スタンフォード大学で認知科学を研究するClifford Nass氏は、「われわれは、頻繁にマルチタスクを行ない続ける人にどのような影響があるかについて着目した」と語る
8月24日(米国時間)に『米国科学アカデミー紀要』(PNAS)に発表された研究で、Nass氏らは、262人の学生のメディア消費傾向について調べた
次に、マルチタスク度が最も高い19人の学生と、最も低い22人が、コンピューターによる2種類のテストを受けた
どちらのテストも、手元にある作業だけに集中して完了させるものだ
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最初のテストは、数の異なる青い四角形に囲まれ、短時間しか表示されない赤い四角形の向きを覚えるというもの
2つ目のテストでは、ランダムに表示される単語を分類し、次に、先にピーという音が鳴った単語は分類せずに同じ作業を行なうことが求められた
3つ目のテストは、マルチタスク度が高い学生と低い学生30人による別のグループを対象に、画面に表示された文字を識別するというものだった
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テストを繰り返すうちに、学生たちは表示された文字が前のテストでも登場したかどうかを覚えておかなければならない
どのテストでも、電子メールのチェック、ウェブのブラウズ、電話での会話、テレビの視聴などを同時に行なう時間が短い学生ほど、作業の成績が良かった
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「これらはすべて、心理学研究では非常に標準的な作業だ」とNass氏は説明する
「最初のテストで成績が悪い場合、それは不要な情報を無視することができないからだということが多くの証拠で示されている
2つ目の作業は、自分の作業記憶(ワーキングメモリ)で物事を整理する能力を適切に反映していることが何度も証明されている[ワーキングメモリは情報を一時的に保ちながら操作するための構造]
3つ目の作業は、1つのことから別のことに、どれだけ速く簡単に切り換えることができるかを示すものだ」−−−−−−−−−−−−−−
これらの差異がなぜ生じるのかという理由は不明だ
研究者らは、脳の画像測定を使ったマルチタスクの神経学的側面の研究や、子どもたちにおけるマルチタスク習慣の形成などについて、さらに研究しようと計画している
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参考論文: “Cognitive control in media multitaskers.” By Eyal Ophira, Clifford Nass, and Anthony D. Wagner. Proceedings of the National Academy of Sciences, Vol. 106 No. 33, August 25, 2009.
[日本語版:ガリレオ-平井眞弓]



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===3===============

スーパー・タスカー:同時作業が得意な、レアな人々

http://wired.jp/wv/2010/04/01/スーパー・タスカー:同時作業が得意な、レアな/
最新の研究により、マルチタスクに長け、運転中に携帯電話を使用しても悪影響を受けないタイプの人が、ごく少数ながら存在することが明らかになった
John Timmer
サイトトップの画像はWikimedia
自動車を運転中に携帯電話などを操作することは悪影響があるという研究がいくつか発表されており、その程度は酩酊に匹敵するほどだという研究もある
複数の国では、携帯電話をしながらの運転は禁止されている
しかし、自分は携帯電話をしながら運転しても大丈夫だと考えて、こうした運転をし続ける人もいる
おそらくこれらの人のほとんどは実際には悪影響を受けているが、『Psychonomic Bulletin and Review』誌に掲載予定の最新の論文(PDF)によると、ごく少数だけ、マルチタスクの処理に特に優れた人がいるらしい
この研究は、運転中の携帯電話には悪影響があるというこれまでの研究は集団的にしか実験を行なっていず、中には例外的な存在がいる可能性もあるのではないかという想定のもとに行なわれた
実験の運転の部分については、市販の『PatrolSim』というシミュレーターを用いた
画面では、複数車線の高速道路コースが約48キロメートル設定され、左側の車線で車が高速で走っている
被験者は右側の車線で、ペースメーカーの車の後について走るよう指示されるが、ペースメーカーの車は時々ブレーキをかけることがある
被験者の反応時間、つまり前の車のブレーキに気付いて自分もブレーキをかけるまでにかかる時間は、運転に対する集中力を測る目安になる
集中を妨げる要素として、被験者たちに携帯電話を渡し、これを使ってオーディオ版の記憶テスト『OSPAN』を実施した
OSPANでは、いくつもの簡単な計算問題にマルバツ式で解答するのだが(例:「(3/1) -1 = 2」はマルかバツか)、出題の間に単語が混じる
被験者は計算問題が出題されたらその場で解答せねばならず、さらに2?5問おきに、登場した単語を順番に思い出すよう求められる
OSPANの成績は、さまざまな古典的記憶テストの結果にほぼ匹敵すると見られている
予想されたとおり、ほとんどの被験者は、運転タスクと記憶タスクを同時に行なうよう求められた場合、どちらの成績も振るわなかった
ブレーキ距離や反応時間は増加し、記憶や計算の成績も、シングルタスクの場合より落ちた
ただし、例外があった――当初の200人の被験者グループのうち、5人(男性3人、女性2人)だけだったが
デュアルタスクで好成績を収めたこれらの被験者たちについては、シングルタスクでのテストの成績が平均以下でないことを確認した
シングルタスクでのテストの際に、故意か過失かを問わず、実力以下の成績を取っていれば、デュアルタスクでのテストの成績が相対的に良く見えてしまうからだ
ところがこれらの被験者たちはたいてい、シングルタスクのテストでも平均以上の成績を取っており、ほとんどの場合は、シングルタスクの実験でもデュアルタスクでも、まったく成績に変化がなかった
それどころか、OSPAN記憶テストについては、これらの被験者はデュアルタスクの場合のほうが成績が良かった
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論文ではこのタイプの人を「スーパー・タスカー」と名付けているが、そのような人の割合はごく少ない
そのため研究チームは、この結果が統計上の偶然である可能性も、もちろん考慮する必要があった
そこでチームは、行なったテスト(記憶、計算、ブレーキ距離、反応時間)の成績データから4つのプールを作り、モンテカルロ法によるサンプリングで、10万件のランダムな成績を作成した
その場合、スーパー・タスカー並みの成績は、0.16%しか出現しなかった
これに対して実験では2.5%の人が好成績を収めたということは、統計上無視できない何らかの現象であると考えられる
研究者たちは、ユタ大学の学生から別のスーパー・タスカーを選び、彼らの例外的な成績が安定的なものであり、少なくとも6カ月持続することを確認した
現在、これらの学生にさまざまな神経的・行動的テストを行ない、この能力に何が寄与しているのかを調査している
われわれはなぜほとんどがスーパー・タスカーではないのだろうか
論文は、2つの仮説を提示している
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1つめは、スーパー・タスキング能力は近年便利になったものにすぎず、従って、進化における自然選択によって広まっていないという説明
2つめは、スーパー・タスキング能力は神経におけるなんらかの損失と共に存在しているという説明だ
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研究者たちは、論文の読者に対して、スーパー・タスカーたちの割合は非常に少ないので、自分がそうだとは考えないでほしいと注意している
10年以上にわたる研究を通して、自分だけはマルチタスクに強いと考える者が多いことがわかっているが、その割合は極めて低い、と研究者たちは指摘している
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[日常的に情報をマルチタスク的に操り、ネットやビデオ、チャット、電話などを同時に駆使する者のほうが、認識テストの成績が劣るという研究もある(日本語版記事)
不要な情報を無視したり、作業記憶内で情報を整理する能力等が落ちている可能性が指摘されている
運転中の携帯は、ハンズフリーであっても危険だという調査結果はこちら(日本語版記事)]
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[日本語版:ガリレオ-江藤千夏/合原弘子]



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「いたずら書きは集中力を高める」その理由は

http://wired.jp/wv/2009/03/02/%e3%80%8c%e3%81%84%e3%81%9f%e3%81%9a%e3%82%89%e6%9b%b8%e3%81%8d%e3%81%af%e9%9b%86%e4%b8%ad%e5%8a%9b%e3%82%92%e9%ab%98%e3%82%81%e3%82%8b%e3%80%8d%e3%81%9d%e3%81%ae%e7%90%86%e7%94%b1%e3%81%af/
いたずら書きをしながらの作業のほうが記憶力が高いという研究結果が発表された
その理由は「認知負荷理論」で説明できそうだ
Brandon Keim
Image: the prodigal untitled13/Flickr
いたずら書きが好きな人たちよ、良いニュースだ
いたずら書きは、気を散らせ、時間の無駄となる習慣だと同僚たちは考えているかもしれないが、こうした習慣が実際には、集中力を促進することで周りから一歩先んじるのに役立つ可能性があるのだ
録音されたメッセージに登場する名前を憶えているようにと指示された実験では、耳を傾けながらいたずら書きをしていた人たちは、そうでなかった人たちよりも記憶が優れていた
これは、いたずら書きがわずかに注意力を逸らせるにしても、実際のところは、退屈なメインの仕事を行なっている間の集中力を向上させる、つまり、いたずら書きをしないとかえって気が散る可能性があることを示唆している
「人々は自分の集中力を高めるために、戦略としていたずら書きをするのかもしれない」と、研究の共同執筆者の1人である、英プリマス大学の心理学者Jackie Andrade氏は述べている
「意識的ではないかもしれないが、こうしたいたずら書きは、人々がわざわざ行なっているものである可能性がある
なぜならいたずら書きをすることにより、[メイン作業から気がそらされて]空想にふけることから人々を救ってくれるからだ」『Applied Cognitive Psychology』誌に掲載されたAndrade氏の論文は、認知負荷理論に興味深い考えをもたらすものだ
認知負荷理論とは、頭脳には一定限度の量の注意力しかなく、その注意力が使われてしまうと、他の刺激情報の処理を停止してしまうというものだ
認知的負荷はマジシャンたちに利用されている
彼らは、華麗な身振り口振りにより、巧妙なトリックで人々の注意を逸らす(日本語版記事)
また認知的負荷は、ハンズフリー・ヘッドセットを使う場合でも、携帯電話を持って会話しながら運転することと同様に安全でないという理由も説明している
そしていたずら書きが、空想にふけることよりもはるかに良いということの理屈にもなりうる
「空想には大きな認知的負荷がかかり、自分が行なうべき作業に大きな影響を及ぼす
一方、いたずら書きには小さな認知的負荷がかかるものの、精神的能力を主要作業に集中させ続けるにはかろうじて充分だ」と、Andrade氏は説明している
Andrade氏の研究チームでは、40名の被験者に対し、人や場所の名前が出てくる留守番電話のメッセージを聴かせ、その後、記憶している名前を書き出してもらった
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被験者のうち半数は、メッセージを聞いている間、紙の上の図形を塗りつぶすよう指示された
実験の結果、彼らは、メッセージを聞いている間にいたずら書きをしなかった被験者よりも、名前の記憶がおよそ30%優れていたという
参考論文:”What does doodling do?” By Jackie Andrade. Applied Cognitive Psychology, Vol. 23, No. 3, Feb. 26, 2009.
[日本語版:ガリレオ-向井朋子/合原弘子]



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注意回復尺度の開発

http://www.hus.osaka-u.ac.jp/kiyo/file/34/34-08_osaki.pdf
日本語版注意回復尺度の開発
尾 ア 勝 彦・藤 田 綾 子
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目 次
1.はじめに
―自然に対する志向性、自然接触の影響―
2.注意回復理論ART(Attention Restoration Theory)と注意回復要素
3.日本語版注意回復尺度の開発―本研究の目的―
4.予備調査
5.本調査
6.結果
7.考察
8.まとめ
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1.はじめに―自然に対する志向性、自然接触の影響―
内閣府の調査(2001)によれば、「自然に関心がある」とする者の割合が81.9%(「非常に」;27.6%、「どちらかといえば」;54.3%)となっている
また、「自然と触れ合う機会をもっと増やしたいか」という設問に対し、「増やしたいと思う」とする者の割合が72.8%(「今も自然と触れ合う機会があるがもっと増やしたいと思う」;44.7%、「今は自然と触れ合う機会はほとんどないが、今後はその機会をもっと増やしたいと思う」;28.1%)であった
さらに、「この1 年くらいの間に森、山、海、川などの自然の多いところに出かけたことがある」とする者の割合が77.9%であったと報告されている
また、2003 年度の調査(内閣府, 2003)では、「森林に親しみを感じる」とする者の割合が88.0%(「非常に」;42.9%、「ある程度」;45.1%)であった
これらの結果は国民の大多数が通常状態において自然が好きであり、自然に接触したいと思っていることを示している
これらの調査の回答はおそらく普通に日常生活を送っている国民から得られたものがほとんどであろうことが推定される
一方、非日常に身をおかれた場合、例えば死生学的に関心の高いターミナル場面における自然との関わりに目を転じてみる
柏木(1995, 1997)は、ホスピス入院患者の多くが、自然との接触を求めることを報告している
例えば、川が見たいという患者を病院近くの川原に連れ出し、当該患者が満足したことや、遠方の桜が見たいという患者を当該地まで連れて行き、結果的に患者の体力消耗をきたしたものの、精神的な満足が得られ、患者にとってよりよい処置であったことなどである
因みに多くのホスピスでは病棟にガーデンや池など、患者や家族が自然に触れることのできる設備が具備されており、彼らの心の和みの一翼を担っているという
また沼野(2001)は、医療スタッフやチャプレンに対して心を閉ざしていた患者を散歩に連れ出したときに、当該患者自らが木の下で「自然と語り合う」といったことを報告している
他に遠藤(2006)は、日々の不動堂参詣を楽しみにしている患者が、実は信仰心がなく、不動堂にいたる道々での草花や日の光、風、季節の変化などと触れ合うことを楽しむ様子が見られたことを報告している
O’Brien(1996)は、死に対する準備を人生の後半の仕事と規定し、それは自然との一体性によって大きく影響されるとしている
竹之内(2005)は、夏目漱石や正岡子規が、身近にありふれた自然の風景に接することによって自大阪大学大学院人間科学研究科紀要34;145-164(2008)
己を自然の中に位置づけることができ、病や死の煩悶から逃れ得たことを述べている
これは、O’Brien(1996)の提唱したことの具体的な事例と考えられる
このように自然は日常生活からターミナル場面に至るまで、人間の生活、生き方に深く関わり、さらに言えばよい方向の影響を及ぼしていると考えられる
しかし、自然の及ぼす影響についての研究は我が国においてはほとんどなされていない
林学関係者の一部は森林浴の効果として、森林の発する揮発成分による生理効果とする説明(宮崎, 2003)や、人類はその歴史の500 万年の内99.99%以上を森林の中で過ごしてきており、森林生活に適応している(宮崎, 2005)とする定性的な説明はあるものの、心理的な説明はなされていない
そこで、本研究では、自然環境が、人間の心身に良い影響を及ぼす心理理論として海外で適用されているAttentionRestoration Theory1) に基づき、我が国で適用できる注意回復尺度の開発を試みることを本研究の目的とする
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2. 注意回復理論ART(Attention Restoration Theory)と注意回復要素
注意回復理論(以下、ART と称する)とその要素については既に筆者が先行研究(尾ア, 2006)で詳細に述べているので、ここではごく簡単に紹介しておく
我々が何かの作業を行うとき、作業対象に対して注意(自発的注意)を向ける
この自発的注意は、作業対象以外からの刺激や情報を遮断することによって成立するが、いつまでも持続できるわけではなく、ついには疲労し持続できなくなる
また、一度に向けられる自発的注意の容量には制限があり、多くの作業を一度にこなすことはできない
一方、自発的でない注意−非自発的注意−は、思わずその対象に注意が向けられるものだが、これには疲労の影響や容量の制限がない
ART では、非自発的注意を喚起するもので、且つソフトなもの(=注意回復要素)が、自発的注意によって生じた疲労その他の心身不具合を緩和する効果があるとするものである
ソフトでないものとは、例えば突然の事故や災害、殴打、流血などでこれらは注意回復には適さない
注意回復要素は、
解放(Being away)
拡がり(Extent)、
魅惑(Fascination)、
適合性(Compatibility)
の4 種類が提唱されている
解放は、日常生活の業務や義務から逃がれ解放されると感じさせるもの、拡がりは、そこから別の世界への拡がりを感じさせるものである
例えば、地下独房では日常の義務からは解放されるが、拡がりがないために注意回復には適さない
魅惑は文字通り魅力的なもの、適合性とは自分の行いたい行動と環境との適合性である
適合性がない環境とは、たとえばドライブ中に目的地の看板が見つからず、関係のない看板ばかりが目につくような環境である
これらの4 要素にもとづいて海外ではいくらかの注意回復尺度が提唱されている
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日本語版注意回復尺度の開発
Hartig, Korpela, Evans, & Garling(1997)は、これらの注意回復の4 因子を想定した17 項目の尺度を作成し、さまざまな環境を大学生、大学院生に評価させた
その結果、拡がり(Extent)とその他という2 因子が抽出された
当初想定した4因子とは異なったが、あらゆる環境に適用することができた
また、実際にフィールドで評価させただけではなく、スライドやビデオなどの映像評価でも同じ結果が得られ、さらに、文化や季節の違いに関わらず、その因子構造は変わらなかったことを報告している
Laumann, Garling, & Stormark(2001)は、22 項目の尺度を作成し、5 因子を抽出した
この場合は、解放(Being away)が、心理的解放(新奇性(Novelty))と身体的解放(避難(Escape))の2 因子に分かれたものである
彼らは森林、公園、海辺、山、都市などさまざまな環境に当該尺度を適用し、同じ因子構造が得られ、さらに、森林、公園、海辺、および山は都市と比べて有意にその因子得点が高いことを報告している
また、Herzog, Maguine, & Nevel(2003)は、設問群ではなくこれら4 要素を、ひとつずつの設問にして、多数枚のスライド写真をそれぞれ評価させ、全体として自然風景と都市風景では、前者の方が有意に高い得点を示したことを報告している
さらに、自然風景内、都市風景内で、ポイントの高かった、または低かった風景を示し、どのような風景が、より回復的であるかを示している
Bagot(2004)は、8〜11 才の児童を対象とした15 項目の尺度を作成した
その結果、Laumann et al.(2001)と同様5 因子が抽出された
図書室と運動場を調査対象としたが、両者とも同じ因子構造で、運動場のほうが有意に因子得点が高いという結果であった
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これらの結果は、以下のようにまとめられるだろう
1) 研究間に差異(2 因子、4 因子、5 因子)はあるが、同一研究内においては、環境の持つ自然の多少に関わらず同一の因子構造である
2) その因子得点が、自然の多い環境のほうが高く、注意回復がより促される
3) スライドなどの擬似自然接触においても同様の結果が得られる
従って、ART は自然環境のみならず、あらゆる環境の回復特性を評価するのに用いることができると考えられる
また、回復要素は、環境の持っている特性ではあるが、客観的・物理的に存在するものではなく、人間の認知によるものである
ART は概して、都市環境と自然環境では、後者の方が回復に資するとしているが、例えば、もし、自然環境よりも都市環境の方を回復場所としてふさわしいとする人がいたとすると、その個人の回復得点は、都市環境下の方が高いことが予測される
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3.日本語版注意回復尺度の開発−本研究の目的
上で見てきたように、海外では、自然環境の影響を回復的というキーワードでとらえ、さまざまな研究が行われているが、わが国では、森林関係者の一部が生理測定とPOMS を行っている程度で、心理的な説明や理論の探求が筆者の知る限りまったく行われていない
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そこで、本研究の目的として以下の2 点を掲げる
1)日本語版注意回復尺度を作成し、信頼性、妥当性を確認する
2)日本語版注意回復尺度を用いて、自然の多い環境として森林を、少ない環境として都市を評価し、森林が都市に比べて回復的であることを示す
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上記の目的のため以下の仮説を設定する
・仮説1:
因子構造が場所に拘わらない
すなわち、森林は森林、都市は都市として別々に因子分析を行い、かつ、両者で同じ因子構造が得られる
・仮説1
つづき:提唱されている注意回復要素が因子となる
すなわち、避難(Escape)、新奇性(Novelty)、拡がり(Extent)、魅惑(Fascination)、および適合性(Compatibility)の5 因子構造または、解放(Being away)=避難+新奇性、拡がり、魅惑、および適合性の4 因子構造である
・仮説2:
回復尺度の因子得点が森林>都市、になる
・仮説3:
POMS サブスケールの値が場所に拘わらず、回復尺度と負の相関がある(「活気」は正の相関)
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4.予備調査
4.1.目的
都市風景、森林風景のそれぞれにおいて、極端に好みや回復傾向の偏らない写真を決定する
この調査で決定した写真を本調査で用いる
4.2.手続き
(1)対象者
大学生および大学院生24 名(女性13 名、男性11 名、M=24.3 歳(SD=2.7))、一般成人59 名(女性36 名、男性23 名、M=45.9 歳(SD=15.5))であった
(2)準備物
質問紙および都市風景、森林風景の写真各10 枚
<風景写真>
@森林風景;山中(木立)、林道(山遠景あり/なし)、山遠景、草原+林、広場+林、芝生+林、岩場、公園、里、の10 枚を準備する
なお、風景内にはできるだけ人工物(電柱等)が含まれないようにした
A都市風景;建物エントランス、道路、広場、および建物の各カテゴリーから数枚ずつ計10 枚準備する
なお、風景内にはできるだけ植物が含まれないよう日本語版注意回復尺度の開発にした
また、人物が含まれている場合は、画像処理で人物を消去した
<質問紙>
@設問T(主観的回復度);
回答者が、現在多大な努力や集中を必要とする業務に長時間に渡って従事していて、回復のために休憩を必要としていると想定する
写真に示した場所が、このときの休憩に適しているかどうかを5 段階で評価する
これは、Herzog et al. (2003)が回復要素の設問の収束的妥当性を確認するために設定した質問である
A設問U(好ましさ);
示された風景が、好きかどうかを5 段階で評価する
(3)手順
調査者は、下の4.2.(5)に示した倫理的配慮を回答候補者に説明し、口頭で了承を得た後に、回答方法を説明した
1 枚目の風景写真をPC のディスプレイ上に提示し、以下、20 枚目の風景写真までを回答者自身が操作、閲覧し、回答する
協力の意思はあるが、その場での回答が難しい場合には、風景写真を収めたCDと質問紙、および返信用封筒を回答者に手渡した
その際にも回答拒否の自由が保障されることを伝えた
(4)解析
@記述統計;主観的回復度、好ましさについて、天井・床効果の有無を確認する
A分散分析;都市風景、森林風景の写真それぞれについて、主観的回復度、好ましさを従属変数とし、グループ数10 の分散分析を行う
B本調査に供する写真の選定基準;
1.天井・床効果のないこと
2.分散分析多重比較で偶数グループに分かれた場合は、中央の2 群に所属すること、奇数グループに分かれたときは中央の1 群に所属していること
3.主観的回復度、好ましさ、学生、一般、共に2.の条件を満たしていること
4.条件を満たすものが複数個存在するときは、主観的回復度、好ましさの平均値の順序が、より中央(5, 6 番目)に近いものを採用する
(5)倫理的配慮
本研究では、以下に示す倫理的配慮を、質問紙表紙に明記し、さらに質問紙配布時に口頭でも説明した
なお、この予備調査後に行った本調査においても、下記の倫理的配慮が適用された
@調査に協力する/しないはあくまでも協力者の自由意志に掛かっていること、すなわち、回答開始前は言うに及ばす、いつでも、たとえ回答を始めてしまった後でも協力を途中で拒否することができることが完全に保証されること
A回答内容や回答拒否による不利益は一切蒙らないこと
Bプライバシーが保証されること
質問紙は本調査以外には使用せず、調査終了後直ちに破棄すること
C調査の終了とは、結果の解析および関連諸学会での発表、関連諸学会誌への論文投稿までを意味する
4.3.結果と結論
(1)本調査に用いる写真の決定
主観的回復度、および好ましさを評価値とした、等質サブグループ数をTable1に示す
これらの、中央のサブグループに含まれるものから、4.2.(4)Bの選定基準に従い、森林、都市から各一枚ずつの写真を決定した
Fig.1 にその写真、Table2に評価値を示す
Table1 主観的回復度、好ましさの等質サブグループ数
Table2 決定した写真の評価値
−−−−−−−−
日本語版注意回復尺度の開発
Fig.1 決定した写真、これらの写真を本調査で使用する
決定した写真は、森林は姫路市安富町関鹿ケ壷付近を撮影したもの、都市は姫路市南駅前町にあるホテルのエントランス付近をそれぞれ撮影したものである
なお、都市の写真は、ホテルのロゴが写っている部分を消去した
−−−−−−−−−−−−−−−−
5.本調査
5.1.目的
日本語版注意回復尺度の開発である
5.2.注意回復設問項目の文言の検討
注意回復理論および注意回復要素で取り上げた先行研究の設問文を元に筆者が日本語訳原案を作成し、筆者を含む心理学を専攻する大学院生10 名によって検討を行った
検討は、設問文がわかりやすいかどうか、天井・床効果が起きないかどうか、文末の処理という観点から行った
わかりやすさについては、拡張(Extent)や適合性(Compatibility)所属の設問文がわかりにくいとされるものが数問あり、修正した
天井・床効果については、当初7 件法で否定系3 件、中立1 件、肯定系3 件としていたのを否定系2 件、肯定系5 件とし、肯定系の幅を広げた
文末の処理は、原則的に断定形ではなく、〜だろう、〜と思う、という推定形にした
当調査はFig.1 に示した場所に実際に行って行われるのではなく、写真を見て、その場所に行ったとして、という仮定の下に行われることを鑑みて推定形の文末とした
このような検討を経てTable3 を得た
Table3 には、設問文の所属する回復要素と出展文献もあわせて示した
なお、所属する回復要素は日本語のみ示した
Table3 注意回復設問
5.3.手続き
(1)倫理的配慮
当調査の倫理的配慮は、4.2.(5)のそれに同じである
予備調査は、研究者が直接回答者に質問紙を手渡したが、本調査の多くは仲介者を通して回答者に配布された
その場合は、仲介者に対して口頭で倫理的配慮を説明すると共に、文書も手渡した
(2)質問紙
本調査で用いた質問紙は以下で構成される
1)写真;Fig.1 に示した2 枚の写真のうちの1 枚が掲載されている
回答者は、当該写真を見ながら、その場所に行ったと仮定して回答するものとした
2)注意回復設問;5.2 節で検討し、Table3 に示した28 問の設問群である
写真に示した場所に行ったとして、回答を求めた
回答は、1;完全にあてはまら日本語版注意回復尺度の開発ない、2;ほとんどあてはまらない(以上、否定系)、3;かすかにあてはまる、4;少しあてはまる、5;まあまああてはまる、6;ほとんどあてはまる、7;完全にあてはまる(以上、肯定系)の7 件法とした
3)回答困難設問;2)の注意回復設問28 問のうち、意味が分かりにくく、回答が困難であったものを回答させた
4)情動尺度POMS 日本版(横山・荒記, 2000);65 項目からなり、「不安−緊張」、「抑うつ−落込み」、「怒り−敵意」、「活気」、「疲労」、「混乱」の程度を測定する
オリジナル版の回答は、「まったくなかった」(0 点)−「非常に多くあった」(4 点)の5 件法であるが、まったくなかった、非常に多くあった、というような過去形の表現から、過去の事実について回答するという印象を与える恐れがあるために、「いいえ」〜「はい」の5 件回答ととた
さらに写真で示した場所に行ったとしての推定の気持ちを回答させるために、設問文末を、〜と感じるだろう、〜と思う、などの推定口調に変更した
また、現在の気持ちではないことを示すために、「もし、現在のあなたの気分状態が悪かったとしても、写真で示した場所がお気に召されたら、多少気分は良くなるかもしれませんし、逆にお気に召さなければ悪くなるかもしれません」といった教示文も付与した
5)主観的回復度、好ましさに関する設問;
(主観的回復度)Herzog et al.(2003)が設定した予備調査の回復度に関するものと同じである
予備調査では、5 段階評価としたが、後の相関分析を考慮して、0〜100 点のあいだの数値で回答させた
数値の直接回答は回答者がイメージしにくい恐れがあるため、注意集中疲労の状況を設定し、回答者自身がそのようなときにどこで休憩を取りたいかということを具体的に答えさせ、その場所を100 点満点として、写真の場所を評価させた
(好ましさ)写真に示した場所が、大嫌い(最も嫌い);0 点〜大好き(最も好き);100 点の間の数値で回答させた
(3)質問紙の配布と回収
当質問紙は、大学または専門学校の講義の際に、講師の許可を得て研究者が配布し、回収した
その際には、4.2.(5)に示した倫理的配慮に加えて、研究者は当該講義とは無関係であること、質問紙への回答の諾否または回答内容と当該講義の成績評価も無関係であることを研究者自身が、または講師を通じて伝えた
また、研究者の直接配布が困難な場合は、講師または講師の上司に配布と回収を依頼した
その際には、倫理的配慮、および上述した成績評価と関係しないことの他に、講師が学生に回答させる形式になるので、学生が回答に対する強制力を感じないように配慮する旨を口頭および文書にて講師に伝えた
(4)対象者
大学(院)生、および専門学校生を対象とした
931部を配布し、626部を回収した(回収率67.2%)
そのうち、557 部が有効回答であった(有効回答率59.8%)
内訳は女性325 名、男性220 名、性別不明12 名、平均年齢20.6 歳(SD=4.0)であった
(5)調査期間
調査期間は、2006 年4 月〜7 月であった
(6)分析
注意回復設問群に対して探索的および検証的因子分析を行った
また、t検定および相関分析も行った
探索的因子分析は、SEFA(Kano, & Harada, 2000)を用い、検証的因子分析は、AMOS4.0(Arbuckle, & Wothke, 1999)を用いた
その他の分析には、SPSS9.0J for Windows(SPSS Inc, 1999)を用いた
6.結果
6.1.注意回復設問項目の吟味
7 点満点なので、平均点が80%程度(≒5.5)を超えるもの、20%(≒1.5)を下回るものを除外の対象としたが、除外された設問項目はなかった
次に、相関係数が著しく高いペアの片方を除外した
26)この場所にいると、私は、普段とは異なった環境にいると感じるだろう(新奇性)、27)この場所にいると、普段とは異なった場所にいると感じるだろう(新奇性)、の相関係数が、森林、都市ともに0.85 を越えており、完全に同じ設問であると判断されたので、27)を除外した
最後に、全体として、回答者の10%以上が「わかりにくい」とした設問を除外した
この操作により、7)この場所の環境には、整然とした首尾一貫性を感じるだろう(回答困難率27.9%、拡がり)、1)私はこの場所に所属しているような感覚を覚えるだろう(回答困難率19.9%、適合性)など、8 項目が除外された
除外の内訳は、拡がり5項目、適合性2 項目、新奇性1 項目であった
この結果、拡がりに所属する設問項目は1 問だけになってしまったので、拡がり因子の抽出は行わなかった
したがって18 項目(避難4 項目、新奇性1 項目、魅惑6 項目、適合性7 項目)を分析することとなった
6.2.因子分析
(1)探索的因子分析
6.1 の設問項目の吟味の結果から、想定因子数は、拡がりを除いて4 因子とし、最尤法プロマックス回転で探索的因子分析を行った
適合度(GFI、AGFI、CFI、およびRMSEA)とクロンバックのα係数の推移を検討した
GFI、CFI はともに.90以上(豊田, 1992)、RMSEA は.05 以下(Brown, & Cudeck, 1993)の適合度を目指した
χ2 値は、サンプル数が十分多いので、考慮しなかった
その結果、想定した4 因子では、適合度の値そのものは、よかったものの因子がうまく分離せず、解釈に困難をきたした
そこで、因子数を変化させつつ、解釈可能で、かつ、適合度の日本語版注意回復尺度の開発、高い解を目指し、設問項目の取捨選択を行った
その結果、2 因子11 項目の共通する因子構造が抽出された
−−−−−−−−−−
第一因子は、15)この場所には、私の気を惹くようなものが沢山あるだろう(魅惑)、14)私はこの場所のようなところで、自分自身の楽しみ方を見つけられるだろう(適合性)、など、想定因子の魅惑4 項目と適合性3 項目の7 項目からなり、「魅惑と適合」因子と命名した
第二因子は、12)この場所にいると、日常やらなければならない義務的なことについて考えることから解放されていると感じるだろう、など避難項目4 つが集まり、想定どおりの解放に関する因子が抽出され、「解放」因子と命名した3)
因子間相関は、森林でr 森林=.573、都市でr 都市=.625 であった
Table4 に抽出された因子を適合度、信頼性と共に示す
適合度のうち、RMSEAは.05 未満にはならなかったものの、許容範囲であり、CFI、AGFI 等十分に大きな値であった
また、信頼性係数も.8〜.9 と十分な値であった
Table4 探索的因子分析結果
(2)検証的因子分析
探索的因子分析の結果のモデルで検証的因子分析を行ったところ、森林、都市ともに、すべてのパスが5%以下で有意な解が得られた
また、適合度も探索的因子分析時よりは多少は低減したものの(Table5)十分な大きさを有しており、項目得点単純加算で尺度として使用できることが示された
Table5 検証的因子分析適合度
6.3.各環境下での因子得点の比較
森林・都市で共通する因子構造が得られたので、因子得点の比較を行った
なお、拡がり因子が抽出されなかったので、拡がりの設問中わかりにくくはないとされた一つの設問、11)この場所の一角で、私はたくさんのことが出来ると思う、の得点(1〜7 点)を比較した
以下、この設問を「拡がり設問」と称する
以下、抽出された因子とこの拡がり設問を併せて「因子等」と称する
Table6 に示すように、すべての因子等は有意に森林の方が高かった
Table6 森林−都市間の因子等得点の比較
6.4.因子等と主観的回復度、好ましさの関連
Table7 に因子等と回復度、および好ましさの相関を示す
因子等は環境に拘わらずすべて回復度、好ましさと0.1%で有意な正の相関を呈した
これまでの尺度化の手続き、およびTable7 に示された結果から、因子の構成概念妥当性が確認された
日本語版注意回復尺度の開発
Table7 因子等と主観的回復度、このましさの相関
6.5.因子等とPOMS サブスケールの関連
Table8 に因子等とPOMS サブスケールとの相関を示す
都市における拡がり設問と「緊張-不安」の関連を除いてはすべて有意な相関を呈した
「活気」とは正の相関でそれ以外とは負の相関であった
このことから、因子等は、置かれた環境下における気分状態の改善の予測因子になることが示され、基準関連妥当性が確認された
Table8 因子等とPOMS サブスクールの相関
7.考察
7.1.注意回復尺度の因子構造と抽出因子について(仮設1 の検証)
仮説1;因子構造が場所に拘わらない、はTable4 に示すように森林と都市で同じ構造が得られ、完全に支持された
したがって本尺度は、ART に適ったものであり、自然環境でも人口環境でも適用できる
仮説1 つづき;提唱されている注意回復要素が因子となる
すなわち、避難(Escape)、新奇性(Novelty)、拡がり(Extent)、魅惑(Fascination)、および適合性(Compatibility)の5 因子構造または、解放(Being away)=避難+新奇性、拡がり、魅惑、および適合性の4 因子構造である、について検証する
仮説1 つづきは、抽出因子数について述べたものだが、この部分は支持されなかった
「拡がり」を分析から除外していたことはともかくとして、「新奇性」に関する設問が採択されなかったことと、「魅惑」と「適合性」が結びついていることによるものである
前者に関しては、「新奇性」に関する設問は1 問だけであったことがその要因と考えられる
後者の「魅惑」と「適合性」の結びつきが興味深い
また、「魅惑と適合」と「解放」間の相関係数も.5 から.6 と高いことも特徴的である
これは、2 因子になったものの、「魅惑」、「適合性」、「解放」の各要素間の結びつきが強いことを示している
Hartig etal.(1997)は、「拡がり」とその他という2 因子が抽出されたと報告しているが、本報告の因子はHatig et al.(1997)の「その他」の因子に近いものとも考えられる
しかし、Hatig et al.(1997)は2 因子となった要因を、「拡がり」のみネガティブな問いかけをしていることであったと推定しており、本報とは設問形態が異なる
また本報では「拡がり」の設問を分析していない
したがって本報で得られた因子構造は、海外先行研究とは異なる日本人独特のものである可能性がある
また、「適合性」は「魅惑」や「解放」に比べれば、わかりにくい概念であり、少なからず設問文の影響も受けていると考えられる
本報で因子が各要素に分離しなかったことについては、今後さらに検討していく必要がある
7.2.因子等得点およびPOMS との関連について(仮設2、3 の検証)
仮設2;回復尺度の因子得点が森林>都市になるは、完全に支持され、森林環境は都市に比べて回復要素を多く含むことが示された
仮説3 は、POMS サブスケールの値が場所に拘わらず、回復尺度と負の相関をする(活気は正の相関)、としたが、これは、Table8 に示すように支持されたといえる
このことは、当該尺度の基準関連妥当性が確認されたとともに、環境による気分状態の変化が、自然環境、人口環境に関わらず注意回復要素という統一的な観点から説明できることを示している
一般的には人口環境よりも自然環境の方が好まれているが、中には都市のような人口環境の方を好む都市嗜好者もいるだろう
本報の結果から、都市嗜好者は注意回復得点が、都市環境>自然環境となり、都市環境下の方が気分状態が良い方向に改善されやすいことが予測できる
7.3.本研究の限界と問題点
まず、注意回復設問の文言が対象者によってわかりにくいとされたものが少なからずあったことが問題であろう
この問題によって、拡がり因子は抽出されなかった
拡がりに拘わる新たな文言を練り、更なる調査が必要である
また、本研究は、大学生、大学院生、専門学校生という青年層を中心になされたものであり、他の年齢域にも必ずしも適用できるとは限らないことを心しておくべきである
環境の評価として、本研究では、写真を用いたが、本来はその場所に対象者を連れて行き評日本語版注意回復尺度の開発、価する方が回答のしやすさという点においては良いかもしれない
しかし、尺度作成となれば、少なくとも数百人の規模の対象者が必要であり、数百人規模を天候など環境条件を統一して同一場所に連れて行くのは、非常に困難である
Hartig et al.(1997)は、実際に対象者を現場に連れて行った場合と、スライドで示した場合とでは、同じ因子構造が得られたとしている
したがって、本研究の対象者のように質問紙の写真で判断させるという方法は、ほぼ妥当であったと考えられる
また、抽出因子が注意回復要素を分離できなかったが、この点については今後さらなる検討が必要である
上述のように、多少の問題点を有しているものの、注意回復という観点から自然接触を捉えた研究は我が国において初めてのことであり、本研究の結果は、今後の環境評価や、園芸療法、森林療法などの自然を対象とする療法にとって、また、都市や公園、施設等の人工空間のより快適な設計にとっても基盤理論のひとつとなり得る重要なものと考えられる
8.まとめ
自然環境が心身に良い影響を及ぼすことを説明する心理理論のひとつに注意回復理論がある
自然環境には注意回復要素が多く含まれるとするもので、「解放」、「拡がり」、「魅惑」、「適合性」の4 種類の要素が提唱されている
我が国においては注意回復理論が適用された研究はなく、本研究では注意回復要素を基にした日本語版の注意回復尺度を作成した
557 名の大学生、大学院生、専門学校生(女性325名、男性220 名、不明12 名、平均年齢20.6 歳(SD=4.0)が森林または都市の写真を提示され、その場所にいるとして注意回復に関する設問に回答した
探索的および検証的因子分析を行った結果、「魅惑と適合」、「解放」の2 因子が高い信頼性と適合度で抽出された
「拡がり」に関する設問は回答者によってわかりにくいとされたたため分析に供さなかった
いずれの因子も当該環境下における主観的な回復度、POMS の「活気」と正の相関、「活気」以外のPOMS サブスケールと負の相関を呈し、妥当性が確認された
また、両因子得点とも森林の方が有意に高く、自然環境は多くの注意回復要素を含むことが示された

1) Attention Restoration Theory は、我が国での適用事例がないため、定まった日本語訳はない
本論では仮に注意回復理論と称する
なお、本論で用いられる「注意」という言葉は、認知心理学の実験で取り扱われるような高々数百m 秒のそれではなく、集中力とか持続力、メンタルワークロード等に近い概念である
2) Being away はそのまま訳せば離脱であるが、注意回復の持つポジティヴな意味いから本報では「解放」とした
3)抽出された設問は身体的解放「避難」(Escape)に属するものであるが、注2)と同様な意味合いで、また設問文にも「解放」という言葉が使われているため、「解放」因子とした
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Japanese version of the Scale to Assess Restorative Components of Environments Katsuhiko OSAKI・Ayako FUJITA Attention Restoration Theory (ART) is one of the psychological theories that explains the positive effect of the natural environment on the human mind and body. ART proposes that the natural environment has 4 kinds of restorative components, which are “Being away”, “Extent”, “Fascination”, and “Compatibility”. Since there is no study that has investigated ART in Japan, this study developed a Japanese version of the Scale to Assess the Restorative Components of Environments. Five hundred fifty-seven students (325 females, 220 males, and 12 unknown, M=20.6 years old (SD=4.0)) rated restorative components while they viewed a picture of a forest or city. Exploratory and confirmatory factor analyses demonstrated 2 factors. One is “Fascination and Compatibility” and the other is “Being away”. “Extent” was not analyzed because a nonnegligible numbers of respondents felt it was difficult to answer. Factors showed a positive correlation with the subjective perception of restoration and “Vigor” on POMS ; however, there was a negative correlation with all subscales of POMS except “Vigor”. The scores for both factors in the forest were significantly larger than those in the city. That shows that the natural environment contains many restorative components.



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